一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
小声で言葉を交わし、聞こえないフリをしてお茶を啜る。

最初の頃は言われるたびに否定してきた。

でもいくら否定しても、みんな私たちが付き合っていると信じて疑わない。

ただの照れ隠しだと思われているのだ。

海斗の彼女は私の親友でもある、佐川亜優(さがわあゆ)。

亜優とは中学生のときに知り合い、仲良くなった。

高校も三人一緒で、ふたりとも中学二年生の頃からずっと両想いだったくせに、なかなか告白しないでウジウジしていて。なんと付き合い始めたのは高校の卒業式の日だった。

やっと付き合い始めたはいいけど、亜優は地方の大学への進学が決まっており、ずっと遠距離恋愛中。すぐには帰ってこれない距離で会えるのは年に数回だけ。

それでも三年間もうまくいっているふたりは、本当にお互いのことを好きなんだと思う。

私だったらきっと無理だと思うから。

だからいくらみんなに海斗には彼女がいると言っても、信じてくれないのだ。

ならもう一層のこと、好きに言わせておこうという結論に至り、なにを言われても沈黙を貫いている。
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