一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「お父さん、いい加減にして。私ならひとりで大丈夫だから」

どうして休日の早朝から、お父さんとこんなに揉めてしまっているのか。

それはつい数日前、南さんがいきなり我が家を訪ねてきた日の夜に遡る。


* * *


「みっ、美弥どうするんだ、お前! いつの間にか大変なことになっているぞ!?」

南さんが帰宅すると同時に、玄関先でお父さんは落ち着きを失い、パニック状態に陥った。

そして私にジリジリと詰め寄ってくる。


「そんなの言われなくても、一緒にさっきまでいたんだから知っているから! ……それに一番びっくりしたのは私だから」

両手でお父さんの身体を押し退け、スタスタと居間へ戻っていく。

中央のテーブルには湯呑が三つあり、先ほどまでこの空間に南さんがいたことを意味している。

つまりさっきのことは夢ではないってこと。

緊張が解け、身体中の力が抜けたかのようにその場に座り込んでしまう。

そして思い出してしまうのは、南さんに言われた信じられない言葉の数々。


「本気……なの?」

ポツリと独り言を漏らしてしまう。
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