一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「まぁ……美弥の気持ちはわかる。だが親心とは複雑なものでな。どうしても自分が苦労した分、お前には本当に幸せになって欲しいと願ってしまうものなんだ。金銭的な面でも、な」


「お父さん……」

初めて聞くお父さんの本音にジンとしてしまった。


「美弥を大切にしてくれるなら、颯馬さんは文句のつけどころのない相手だよ。母さんが生きていたら、きっと同じこと言うと思うぞ? 母さん、案外メルヘンチックだったから、颯馬さん見たら一目で気に入っていたと思うしな」


やだな、しみじみ言われて更にお母さんの話までされちゃったら、なにも言い返せなくなっちゃうじゃない。


お父さんの言う通り、お母さんはメルヘンチックな人だった。幼い頃、よくシンデレラやおやゆび姫といった、お姫様が出てくる童話を読んでくれたし、今でも覚えている言葉がある。


『いつか美弥にも、素敵な王子様が現れるといいね』


お母さんがよく言っていた言葉だ。

そんなお母さんが今も生きていて、この場に居たらお父さんと同じことを言うんだろうな。

『美弥、現代版シンデレラみたいだね』って。

お母さんのことを想うと、いつも泣きそうになる。
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