一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「……ダメかな?」

そして最後に上目遣いでそんな言い方してくる。


そんなのお断りです!! ……とは言えず、顔を引きつらせながら「少しだけなら……」と了承した途端、彼は遠慮という言葉を知らないの?って聞きたくなるほど触ってきた。


「ミャーの髪に触れていると、ミャーを撫でている時を思い出すよ」

「……それはよかったです」

もう苦笑いするしかない。

やっぱり私は彼にとって、亡くなった愛犬の代わりでしかないの?


なに? 一日の終わりにこのオチは。最高に楽しかったのに。……ちょっと気持ちが揺れてしまったのに。

ときめきを返してほしい! っていうか、どうして私、彼にときめいたりしてしまった!?


彼に髪を触られながら、今日感じた彼への気持ちすべてに後悔するばかりだった。
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