一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
#5『買い物パニック!』
「お父さん、おかずテーブルに運んでくれる?」

「はいよ」

月日は流れ、十月中旬。

南さんと初めてデートした日から、早一ヵ月が過ぎようとしていた。


この日も一日の仕事を終え、お父さんが入浴中に夕食の準備をし、お風呂から上がったお父さんに、準備を手伝ってもらっていた。

「美弥、今日は作らないのか? だし巻きたまご」

お盆に乗せた今日のメニューを眺めながら、聞いてきたお父さんに、味噌をとく手が止まってしまう。

「お父さん、やめてよ。そんなこと言った日に限って……」


言い掛けたところでタイミングよくなった、来客を知らせるインターホン。

すぐにお父さんと顔を見合わせ、お互い苦笑いしてしまう。


「父さん、エスパーかな?」

「……そうかもしれないね」

顔を見なくてもわかる。

この時間、最近我が家を訪ねてくるのは、たったひとりしかいない。

「お父さん、運んでおいて。私出るから」

「あぁ」

おかずが乗ったお盆を手に居間へ向かうお父さん。

私も火を弱め、玄関のドアを開けると、そこにはやっぱり予想通りスーツ姿の南さんが立っていた。
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