一途な御曹司は、ウブなお見合い相手を新妻にしたい
「すみません、なんか。……あ、この写真のミャー可愛いね」

空気を変えようとしてくれているのか、いつもより彼の声がワントーン高い。

それに気づいたお父さんはゴシゴシと涙を拭い、南さんに答えた。

「そうでしょう? これはベストショットでしてね」

「どれも可愛いですけど、これが一番ですよね」

幼い頃の私の写真を見て盛り上がるふたりに、話題にされているこっちは恥ずかしくなるばかり。


それでも彼を眺めてしまっていた。

南さんはお母さんがいない幼少期を、どんな思いで過ごしてきたのかな? きっと寂しかったよね。


私も幼い頃にお母さんが亡くなって寂しかった。けれど南さんは私のようにお母さんとの思い出などない。

それってすごく辛くて寂しいことだよね。

「それにしてもミャーは小さい頃から、髪がふわふわだったんですね」


「そりゃもう生まれた時から、天然パーマかかっていましたから。家内とよくパーマ代かからなくて、羨ましいねなんて言って笑ってましたよ」

そう言って本当に笑い出したふたりに、怒りが込み上げてしまった。
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