理想の人は明日から……
理想の真逆の人
 
『背の高い、優しい笑顔の彼……

  私に、手を差し伸べてくれた……


   理想の人……』



 今朝見た夢の続きに浸って、昼休みの僅かな残り時間を楽しむ。

 皆が仕事を始める気配に、気持ち良く目を開けうっとりとしたまま、自分のデスクから身を起した。


 頭の中は、まだ理想の人の面影の余韻に埋め尽くされている。



 しかし、私の目の先に入って来たのは、頭の中とは真逆の男の姿だ。


 自分のデスクに座っては居るものの、昼休みの終わりにも気が付かず、椅子の背もたれにしっかりと背中を崩すように寄り掛かり、上を向いている顔の上にはスポーツ新聞が載っている。




 その姿のおかげで、私の頭ははっきりと現実に戻された。
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