理想の人は明日から……
 私は、ルンルン気分で銀行に入った。


 窓口に振り込み用紙を出し、ソファーに座り手続きが終わるのを待つ。

 隣りには若い妊婦さんが座っていた。


 岸田さんと食事なんて、どこへ行くのだろう……
 
 そんな事を想い描いていたのだが……


 突然!


「きゃあ――」

 女性の凄まじい悲鳴が聞こえた。


 すると、覆面をした男が銃を天井にぶっ放し、大きなボストンバックをドッサっとカウンターに置いた。


「早く、金を詰めろ!」


 慌てて、立ち上がり出て行こうとする客に向かって、もう一人の覆面の男が怒鳴った。


「動くな!」


 まるでドラマのワンシーンみたいだが、訓練なんだろうか? 

 でも、銀行員の顔は演技と思えないくらいに怯えているし、さっきの打たれた天井も穴が開いていて、蛍光灯も割れている。


 ええ――。


 まさか、本物の強盗?



 覆面強盗二人は、お金を詰めたボストンバックを抱えて慌ただしく銀行を出て行き、ほっと胸を撫で下ろす間も無く又戻ってきた。


「くそっ―。 警察がいるじゃないか?」

 覆面の男は苛立っている。


「シャッター締めろ!」

 もう一人の覆面男の命令に、銀行員がシャッターを下ろす操作をした。




 ガラガラと音を立て、シャッターが下りた。



 多分…… 



 立てこもりって事になってしまったんだろう……

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