理想の人は明日から……
　次の日の朝、私はダラダラしている部長の前に立った。


「夕べはごちそう様でした。あれは口止め料って事ですか？」


「えっ、なんの？」


「女性とイチャイチャ現場を見た」


「まさか、違うよ。あまりに上手そうに食べる子が居たから、ひもじいのかと思ってさ」


「ええ！　そりゃ貧乏ですけど、そんな顔して食べてません！」

　私は又、チャラ部長を怒ると、自分の席にドシドシと戻った。



「南さん、朝から苛々してどうしたんですか？」

　篠田さんが、相変わらずにこやかに声を掛けてきた。


「夕べ、パスタ屋さんに綺麗な女性と部長がイチャイチャ食事していたんですよ。口止め料替わりに奢ってくれたんです」


「おやおや、南さん喋っちゃったら口止め料になりませんよ」


「あっ」
　私は慌てて口を押えた。


「多分、部長は南さんと一緒に食事したかったんじゃないですかね……」


「ええ―。そうかな？」
　私は首を傾げた。


「きっと……」
　篠田さんの目は、部長の姿を見ていた。


「ああ、そっかぁ。一緒にいた私の友達、凄い美人なんですよ。危なかったぁ」


　私は安心したように言ったのだが、篠田さんは少し淋しそうに微笑んだ。

　少し、私の心の中で何かが引っかかったような気がした。

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