理想の人は明日から……
「おーいみんな、今週金曜日、企画部との合同の飲み会になったから空けておいてくれよ!」
 部長が声を張り上げて言った。

「はーい」

 皆、嬉しそうに声を上げた。




 企画部との飲み会は、三十人程集まり近くの居酒屋で行われた。

 部長の周りは企画部の女子達が囲い盛り上がっている。



「南さんは、どんな男性が好みなんですか?」

 隣に座っている篠田さんが、いつもの優しい笑顔で聞いてきた。


「私、小さい頃から夢に見る人がいるんです。顔ははっきりしないんだけど、優しそうに笑いかけて、背が高くて、落ち着いた品があって、白いタキシードで手を差し伸べているんです。まあ、私の理想は誠実な人で、女癖が無くて私だけを見てくれる人かな。そんな人居ないですかね?」


「素敵じゃないですか、きっと現れますよ」

 篠田さんの言葉に嬉しくなり、私の心も軽くなった。



 すると、宴会の部屋の入口が開き、一人の男性が入ってきた。見たことの無い顔だ……


「遅くなってすみせん」


 軽く頭を下げ、顔が上がると優しい笑顔が現れた。

 私の胸は、ドキドキしはじめた。

 背も高くて、落ち着いた気品がある。


 夢に出てくる理想の人そっくりだ! 


 私の目は彼に釘づけになってしまった。
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