俺様社長に飼われてます。


だだっ広いホテルのスイートルームのような部屋だった。

部屋の広さのわりにはソファと、ガラス製のテーブルと規則正しく書物が並べられた大きな本棚しかない。

それから、今私が寝かされていた人が5人も悠に寝てしまえるほどに大きなベッドしかない。
家具は全てモノトーンでまとめられて、家主がいかに目に騒がしいものを好まない人なのかわかる。

ベッドに視線を落とせば、ミネラルウォーターのペットボトルが手元に転がってきていた。未開封のそれを手に取って、キャップを開ける。


濁りもなく透明なそれを一応匂いも確認して、大丈夫そうだと判断して一口飲んだ。

身体の奥まで染み渡るような、待ち望んだ水分――私は次の瞬間にはそれを一気にあおった。


「……好きに使っていい、って言ったって」


ガンガンと脈打つこめかみを押さえて、私はもう一度部屋を見回す。

ここはどこで、あの人は誰だ?

あの男達から助けてくれたということはわかるけど、彼が私に危害を加えない人物だと確定したわけではない。

下手に行動して逆鱗に触れるなどはごめんだ。彼が帰ってくるまで、待とう。


吸い込まれるように私はもう一度枕に顔を埋める。疲れ果てた身体と脳はすぐに睡眠を欲して、シャットダウンされた。



< 10 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop