俺様社長に飼われてます。
「昨日はどこに行ってた」
突然背後から聞こえた低い声に、私はビクリと大げさに肩を跳ねさせた。
壊れたロボットみたいにギギギ、とぎこちなく振り向けばトレーに二人分のコーヒーを載せた高山さんが疲れ切った顔で立っている。
「……え、っと……」
入り口に立ったまま返答に困っていると、早く座れと言わんばかりに背中を押されて促されるままにソファに座る。
動揺を隠せないまま高山さんを見たり書類の山を見たりしていると、書類から少し離れた場所にティーカップを置かれた。
私がカフェオレを好んで飲むことを知っているから、あらかじめ調整してくれたのだろう。柔らかい茶色のそれからはコーヒーとミルクの独特な香りがする。
「言えないのか?」
先ほどの高山さんからの問いに対しての言葉だろう。私は口元を引くつかせて、恐る恐る顔を上げた。
淡々とした口調に反してその表情は怒りが混じったものだった。思わず肩をすくめて目をそらす。
「……赤羽くんの、家……」
「……赤羽?あの赤羽か」
自分の会社の従業員(直属かどうかは知らないけど)の名前が出てきたことに驚いたらしい高山さんはカシャン、と音を鳴らして自分の分のコーヒーカップをソーサーの上に荒々しい仕草で置いた。