俺様社長に飼われてます。


「泊まったのか?」


今度は声にも怒りが滲んでいる。

その威圧的な態度に恐怖よりもじわじわと怒りの感情が湧き上がってきて、私は眉根を寄せた。


そんなに怒ることなの?

たぶん、高山さんが想像してるだろうやましいことなんて何もない。それよりも高山さんだって、女の人とキス……してたのに。


「……はい。」


小さな声で、素っ気なく答えると高山さんはため息をついて、コーヒーカップの取っ手に指をくぐらせた。


「そうか」


それ以上、何かを聞かれることもなく何も咎められることもなかった。


どちらも声を発することなく、黙々といつも通りの仕事をする時間。

そして、私がいつも通り一日分の仕事を終わらせて席を立った時に高山さんは何ともないように、平然と言い放った。


「明日から手伝わなくていい」


その言葉に何の意味が込められているのか、聞きたくないし知りたくもない。

私は泣きそうになるのを彼に悟られないように、強い口調で返した。


「わかりました」


こんな時、なんて返したら人間関係が上手くいくかなんて私にはわからない。


あまりに世の中を知らなすぎたから。



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