俺様社長に飼われてます。
機材を運ぶ騒がしい音と、ああでもないこうでもないと飛び交うスタッフ達の声。
メイク直しを終えた私はスタジオのセットが終わるのを待つ間、完全に暇を持て余していた。
「……あー、篠原さん。昨日大丈夫でした?」
早朝からアシスタントとして駆け回っていてようやく休憩を貰ったらしい赤羽さんがコンビニの袋を片手に、疲れた顔をして私に話しかけてきた。
赤羽さんは肩からずり落ちるパーカーを力なく直しながら休憩用に用意された机と椅子に座る私から一席分離れて座った。
「社長、なんか怒ってました」
「……でしょうね」
赤羽さんがコンビニの袋の中に手を突っ込んで、出てきたのはおにぎり一個と栄養ドリンクとエナジードリンク。身体に悪そう。
「無断外泊したから怒ったんでしょうか?」
高山さんの怒った理由がいまいちわからず赤羽さんにそう聞くと、彼はおにぎりの包装を剥がす手を一瞬、ピタリと止めた。