俺様社長に飼われてます。
撮影が終わり、高山さんの家に帰ると20時を過ぎた頃だというのに部屋中電気が消えていた。家主はまだ帰宅していないらしい。
冷蔵庫に入っている作り置きのおかずをレンジで温めて、1人で寂しくつまんで食べた。
シャワーを浴びながら高山さんになんて謝ろうかとか、秘書の仕事はもうしなくていいって言った理由はなんて聞こうかとか、色々考えた。
考えて、考えて――記憶にあるのは、時計の針が頂点に届く頃。
いつの間にかソファに座って寝てしまっていたらしく、ガチャガチャと鍵や扉を開ける音で目が覚めた。
振り向いて扉を確認すれば、今一番会いたくもあり会いたくなくもある、この家の主であった。
「おかえり、なさい」
一瞬の躊躇いを悟られたのかはわからない。
高山さんが眉根を寄せて、気だるげに口を開いた。
「ガキのくせにまだ起きていたのか」
さっきまで寝てたんだけど、と言いかけた言葉は甘ったるい香水とアルコールの匂いで塞がれる。