俺様社長に飼われてます。
「驚かせてしまってすみません。あの……高山、"前"社長って……」
「あ、もしかしてあなた新入社員?……えっとね、高山虎太郎(たかやま こたろう)。この会社の創設者よ。今の社長の義理のお父さん」
高山さんから何も聞いていないから知らなかった。どうりで、社長にしては若すぎると思った。
先ほどの女性社員同士の会話から得た知識から推測するに、単純明快。前社長が病気で退職、そこで高山さんが引き継ぐ形になったのだろう。
「今の社長、年齢にしては仕事が出来るとは思うけど会社を存続させるだけで精一杯みたいだから。どうなるかしらね」
確かに、高山さんの秘書のようなことをして少しだけ仕事を手伝っていたけど、思い返せば彼は無理をしている様子もしばしばあった。
ずっと悩んでいたんだろうか。
ずっとずっと、1人で?
私は女性社員にお礼を言って頭を下げて、手にしていた封筒を「社長に届けておいてください」とだけ言って渡し、会社を後にした。