俺様社長に飼われてます。
扉が閉まる音に合わせるようにポロリと涙が頬を滑り落ちて、箸を握る私の手の甲を濡らした。
同じ家で一緒に暮らしてご飯を食べて寝たって、私達は家族でもなければ恋人でもないし友人でもない。
じゃあどんな関係なのかと聞かれたら、帰る場所を失くした少女と哀れみでそれを保護する社会人という説明しかできない。
他人も他人。ただの居候。私は他人に寄生してるだけのロクデナシだ。
そんな風に突き放すなら、どうして私に触れたりキスしたりしてくるんだろう。ただの欲望のはけ口?そんなのあんまりだ。
「ごめんなさい」
自分だけの空間で、誰にともなく独りごちた。
涙でぼやける視界で足元も覚束無いままなんとか寝室にたどり着いて、クローゼットの前に立つ。
確かここに私が高山さんに拾われる直前、身に付けていた衣服やなけなしの荷物をしまったはずだった。
出ていこう。
これ以上、他人である高山さんに迷惑をかけられない。行く宛もないけど、そもそも私は売られる身だった。本来の運命に従い、その自然の摂理に倣うだけ。
力の入らない手でなんとか開けると、開けた拍子に中にしまっていたものが落ちてきてしまったのか座り込んだ私の膝に何かがコツ、と当たった。