俺様社長に飼われてます。
「高山さんっ!」
思ったよりも大きな声が出た。
呼ばれた彼は珍しく驚いたのか肩を跳ねさせて、勢いよくこちらを振り向いた。
夜風に当たりたかったのか、彼はマンション専用駐車場のコンクリートの低い塀に腰を下ろしてぼんやりと夜空を見上げているところだった。
こんな都会で、星の瞬きを一つも見えないというのに。
「……私の誕生日、知っていたんですか」
私に贈るはずだったらしいプレゼントの中身――指輪がチェーンに通された、シンプルなネックレス。
目の前に突き出されたそれを面食らったように見つめた高山さんは、ネックレスと私の顔を交互に見て、やがて諦めたようにため息をついた。
「俺も大人だから、一応正式な手続きを踏んでお前を保護している。その時にお前の個人情報を知った」
高山さんはゆっくりと手を伸ばして、私の手からネックレスをさらう。
「本当はサプライズで渡したかったんだかな」
「……私のこと、嫌いになったんじゃないんですか」
私の言葉に口をへの字にした高山さん。やがていつも通りの仏頂面に戻って、ゆるく首を横に振った。
「最近の俺はあまりに余裕が無さすぎた。お前を傷つけることばかりだったな」
少し昔話をしようか、と高山さんが私を隣に座るように促す。
それに大人しく従い、腰を下ろすと高山さんがゆっくりと語り始めた。