俺様社長に飼われてます。
俺は親に恵まれない子供だった。
記憶があるのは小学生低学年頃から。
それ以前の記憶は一切ない。
どこで生まれてどこで育ち、どのような生活をしていたのかまるで最初から何も無かったかのように抜け落ちている。
あるいは、思い出したくない記憶なのかもしれない。無意識下の防衛反応、忘却という名の自己防衛。
記憶が残っている頃の自分は既に施設に入り、事情は違えど同じような境遇の子供達と暮らしていた。
記憶がないことが引け目となり上手く人と関われず、施設でも孤立し学校でも「親のない子」として奇異の目で見られたり、それを理由に虐めのようなことをされていた。
最も、自分から他人に関わろうとはしない気質も影響したのだろうが。
人は本能的に自分に共有・共感しない者を異物とみなして排除しようとするらしい。
無口、無表情、非協力的で何を考えているか分からない。それが俺の他人から受ける印象と評価だった。
だからといってそれをどうにかしようだとか、自分の本質を理解してもらおうだとか思ったことは一度たりともなかった。
自分を偽って、取り繕ったって息苦しいだけ。それなら自由気まま、ありのままに生きて外界から苦痛を受ける方がましだと思っていたからだ。