俺様社長に飼われてます。
「もうあの女は出禁にした。……ああ、入室のパスコードも変更したから後でお前に教えないとな」
「……私、また高山さんの秘書をしていいんですか?」
「ああ。もうお前を遠ざける理由もないしな」
そう言って初めて、微かにだが優しく笑った高山さんに心臓が大げさに跳ねたのかわかった。
やっぱり私、高山さんのこと――
「ところで未央。お前、嫉妬するほど俺のことが好きなのか?」
思わず後ろにひっくり返った。
手入れの行き届いた人工芝の中に後頭部を突っ込んだまま、私は空を仰ぐ。誤魔化されないとでも言うように、視界が高山さんの整った顔で埋め尽くされた。
「ち、近っ……!」
「近づいてるからな」
何でもないような口調だけど、高山さんの声は少しだけ楽しそうに弾んでいる。
自分のことを疎いとかなんとか言ったわりに、私の気持ちを見透かしているではないか。
「で?どうなんだ」
「ほしがきれい」
「お前には何が見えてるんだ」
誤魔化すように言った言葉も高山さんの一声ではねつけられる。
街灯しかない、星の光なんて全く見ない墨汁を垂らしたような夜だ。