俺様社長に飼われてます。



家に帰って、ガラス製のテーブルの上に企画書とルージュを並べて私は頭を抱えていた。


撮影に使用する色は「誘惑のワインレッド」。

それを試しにと塗ってみたものの、全然似合わない。


「何だっけこの感じ……そうだ……七五三だ……」


幼少期に着物を着せられて顔面を塗りたくられた記憶が蘇る。まるで背伸びした子供だ。もう18歳になるのに――。


「未央」

「わっ!」


突然背後から掛けられた声と右肩に置かれた手の感触に飛び上がるほどびっくりして声を上げてしまった。

恐る恐る振り向くと、そこまで驚かれると思っていなかったのか驚いた表情のまま固まる高山さんがいた。


「お、おかえりなさい」

「ああ」


時計を見ると時刻はまだ18時前。
今日は定時で上がってきたのか、ずいぶんと早い帰宅だ。


「誕生日おめでとう、未央」


耳元で囁くように言われたかと思えば、耳たぶに唇が押し付けられた。
正確には私の誕生日は今日の真夜中――日付けが変わる頃だけど。


そういえば今日は外食するから夕方には出かける準備をしておけと朝に言われてたっけ。朝のやり取りを思い出して慌てて立ち上がると視界が歪んだ。


< 133 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop