俺様社長に飼われてます。
「うん。昨日よりいい表情をするようになった」
小さな液晶画面で撮影された映像を確認したプロデューサーはアゴヒゲを撫でつけながら唸るようにそう言った。
その表情が浮かないことから、まだ納得のいくレベルには到達していないことがわかる。
「すみません、迷惑をかけて……私……」
「ああ、いいんだよ。年齢のわりにはよくやってくれているし」
きっと一流のモデルや女優ならば、どんなオーダーだってそつなくこなすんだろう。
私なんてたかだか運良くモデルになれただけの素人上がり。レッスンも積んできたわけでもないし経験も豊富なわけじゃない――優しい言葉をかけられるほどに自分の未熟さを思い知らされる。
唇を噛んで俯いていると、スタジオ内がざわついたのがわかった。
「え、社長が何でこんなところに?」
社長、という言葉に反応して反射的に振り向くといつも通り何を考えているか全く読めない仏頂面でスタジオの扉の前に立つ高山さんの姿があった。
「あ、そーちゃん!いらっしゃ〜い」
柳谷さんの明るい声が響いて、高山さんはうるさいとでも言うように眉をひそめて長い足を惜しみなく利用して大股でこちらまで歩み寄ってきた。