俺様社長に飼われてます。
「ああ、妬いた。だったら何だ」
倒れた湯のみを直してテーブルの端に置いていたテーブル用のダスターで零したお茶を丁寧に拭きながら、その動作とは裏腹にやけくそに高山さんはそう吐き捨てた。
「恋人が他の男と仕事だとしても触れ合っていて良い気がするわけがない」
恋人――そうだ、私達は恋人になったんだ。
目まぐるしく過ぎていく日々にすっかり実感なんてなくしていたけど、改めて言葉にされて思わず口元が緩んだ。
「何故笑う」
「ごめんなさい、嬉しくて」
「嬉しい?」
ただでさえ悪かった高山さんの機嫌が更にどん底まで落ちていく。私は慌てて立ち上がった首を横に振った。
「あ、いえ、付き合ってからあんまり恋人らしいことしてないから実感なくて……恋人、って言われたのが嬉しいと言いますか」
そこまで言ってまた口元がふにゃりと緩んで、高山さんは呆れたと言わんばかりにため息をついた。
ガタリ、と椅子を引く音がして瞬きをすると高山さんがこちらに向かってくるのが視界に入る。
無表情で近付いてくる彼に思わず身を守るようにして後ずさるとソファに足がぶつかってまた座る形になる。