俺様社長に飼われてます。
「す、スキャンダル?」
私の言葉に先ほどまで神妙な表情をしていた柳谷さんがふにゃりと泣きそうに顔を歪ませた。
「そうなのよ。どこで売られたのか知らないけど、そーちゃんと未央ちゃんのこと……あることないこと書かれていて……」
社長室の手前にある応接室。真ん中にガラス製のテーブルがあり、その周囲を囲うように黒い革製の上質なソファが配置されている。
その長いソファ――お客様が座る方に私と高山さんは腰を下ろしている。
差し出された雑誌に一通り目を通した高山さんはいつも以上に不機嫌そうに眉根を寄せた。
「これはすでに世の中に出回っているのか?」
「いいえ。明後日発売予定よ。脅迫のつもりなのかしら……わざわざ送りつけてくるなんて」
くしゃり。高山さんの手の中で握り締められてゴミのようになったそれがガラス製のテーブルに放り投げられる。
基本無表情で感情の読めない彼が、誰が見ても怒りを察知できるくらいにイラついていた。この記事を書いた人間が目の前にいたなら秒で殴り殺しそうなくらいの般若のような表情で腕を組んでいる。
隣に座る私はかなり居づらい。
だけどここで私が彼を避けるような行動に出れば火に油だろうことはバカでもわかるのでじっと息をひそめて二人の会話の進展を待った。