俺様社長に飼われてます。
「株主総会を控えてるのにまずいわよ、そーちゃん。どうするの?」
くしゃくしゃになった雑誌に不安そうに視線を落とした柳谷さん。
高山さんは低くうなってもう一度雑誌を拾い上げた。
「”COSMO’S代表取締役社長、未成年と交際か”……ね」
見出しをゆっくりと読み上げた高山さんはどこか遠い目でソファの背もたれにふんぞり返るようにしてもたれかかって天井を仰いだ。
「まあ事実だしな。ははは」
お手上げだと言うように両手を上げて乾いた笑い声を漏らした高山さんの胸ぐらをものすごい剣幕で柳谷さんが掴み上げた。
「笑いごとじゃないのよ……?」
忘れがちだが女性的な口調と仕草をするものの、柳谷要はれっきとした成人男性だ。
おそらくものすごい力で胸ぐらを掴まれている高山さんは一切の動揺を見せずにその手を払い落とした。
「はは、まあ落ち着け。やばい時こそ笑顔だぞ。はっはっは」
「大丈夫、そーちゃん?キャラ保ってちょうだい」
不機嫌から一転、見たこともない爽やかな笑顔で笑う高山さんを心配そうに見る柳谷さん。私もまた同じように隣で口をへの字にして高山さんに視線を向けた。
「――未央」
「は、はい」
図ったように笑うのをやめて真剣な顔をした高山さんが私の方を振り向いた。
何を考えているのか全く読めない黒い瞳がじっと私を見つめる。
もしかして別れようって、言われるんじゃ。
「た、高山さん。わ、私……別れたくない……」
今にも泣きそうになるのを堪えて、高山さんの腕にすがるように抱きついた。
すると高山さんは「はあ?」と小さく漏らして、泣きそうな私の顔を隠すようにして大きな手のひらで覆った。