俺様社長に飼われてます。
「結婚するか」
「え」
あっけらかんと言い渡されたプロポーズに声を漏らしたのは私ではなく柳谷さんの方だった。
「そーちゃん!?ちょうどいいから結婚しちゃえってこと!?サイテー!未央ちゃんが可哀想!」
「そんなことは思っていない」
高山さんは鬱陶しそうにテーブルに身を乗り出して異論を唱える柳谷さんの顔に雑誌を押し付ける。
「好きな女の隣に堂々といたい。それが理由の結婚は悪か?」
驚いて高山さんを見上げると、再び大きな手のひらによって視界を塞がれた。
「そ、そーちゃんが女性にそんなこと思うなんて……!明日の天気は!?」
「予報は晴れだな」
「マジレスありがとっ!」
どこから取り出したのかスマートフォンの画面を見ながら呑気に高山さんが言う。大して柳谷さんは高山さんの自由さに頭を抱えているようだった。
「こんな形のプロポーズで申し訳ないが……指輪も式場もドレスも、とびきりのものを用意する」
高山さんの手が離れて一番最初に視界に入ってきたのは切なげに眉根を寄せる高山さんの整った顔だった。
柳谷さんが言ったように軽い気持ちだと思われていないかと不安なんだろう。
そんな罪滅ぼしみたいなことをしなくたって、私の気持ちは高山さんから離れたりしないのに。
「私……高山さんと一緒にいられるならそれ以上のことは望みません」
その言葉を言い終わるか言い終わらないかで身体が浮いて、気づいた時には高山さんの腕の中にいた。
「あー、もう。お幸せに」
呆れたような柳谷さんが応接室に響いて、私は誰にもバレないようにそっと苦笑いに似たため息を漏らした。