俺様社長に飼われてます。



「ごめんなさい、柳谷さん」

「はあ。もう、そーちゃんったら欲がないように見えてほんっとわがままなのよね。仕方ないわ」


連日の高山さんの自由奔放さに疲れ果てているらしい柳谷さんは冷めて湯気の立たないコーヒーカップを手に取ってため息をついた。

それと同じタイミングで内線の電話が鳴る。高山さんは気怠そうに腰を上げて受話器を取って耳にあてた。


「高山です。……ああ、それなら入ってくるといい」


短く返事をしてセキュリティパネルを慣れた手つきで操作する。

ロック解除の電子音のあとにゆっくりと扉が開けられて不満そうな顔を出したのは手入れのされていないボサボサの茶髪に赤ブチの今時なオシャレな眼鏡。


「赤羽さん」

「どうも」


久しぶりに見たそのよく知る顔に思わずテンションが上がって駆け寄ろうと椅子から立ち上がると、隣にいた高山さんに肩を掴まれて強制的に再び座ることになった。


「あー、自分は柳谷さん呼びに来ただけなんでお気になさらず。ああそうだ、社長。ご結婚おめでとうございます」

「ああ。ありがとう」


ここまで来て今更赤羽さんと何かあるわけないのに、初めて人間を見る野生の動物みたいに警戒心をむき出しにする高山さん。

こればかりはため息をつきたい。もう少し私を信じてほしいというか。


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