俺様社長に飼われてます。
「いやー、こんな可愛い女の子と結婚できるなんて羨ましいですね」
どうしてそこで煽る、赤羽さん。
「お前にはやらない」
「あはは、油断して誰かに持っていかれないといいですね」
たぶんこの感じだとわざと煽っている。珍しく感情をむき出しにしてる高山さんが面白くて仕方ないんだろう。
「あ、赤羽さん……」
「冗談ですって」
そう言って笑いながら赤羽さんは柳谷さんに歩み寄って、首根っこを掴んだ。
「いやぁっ!アタシ戻らないわ!」
「バカ言わないでください。まだ仕事残ってますよ」
身長推定180近いであろう成人男性を片手で引きずっていく赤羽さん。見かけによらず力強いんだなぁ。
「そうだ、赤羽」
「はい?」
柳谷さんを連れて退室しようとしていた赤羽さんを高山さんが呼び止める。
「結婚式のカメラマンをお前に頼みたい。あとで正式に会社宛てに依頼書を送る」
「え、自分でいいんですか」
思ってもいなかった言葉だったらしく思わず柳谷さんを掴む手を離してしまったらしい。ゴツンと鈍い音とうめき声が聞こえた。
「写真を撮る腕は確かだとお前の上司から聞いているぞ」
「マジで?あの人が?」
あの人――初めて赤羽さんと出会ったとき、彼を怒鳴りつけていたおじさんのことだろうか。
なんか意外というか……全く想像ができない。
たぶん今、私と赤羽さんは同じことを考えている。
「頼めるか?」
隣に座ったまま、高山さんが私の肩を引き寄せる。
赤羽さんは呆気に取られたような表情のまま2、3度瞬きをして、それから目を細めて人差し指と親指でカメラのフレームを模すような仕草をした。
「任せてください。最高の瞬間を収めてみせますから」