俺様社長に飼われてます。
「未央」
小さく、聞こえるか聞こえないかの声で呼ばれて顔を上げる。高山さんと目が合った瞬間、柳谷さんが私から離れていく。
「そ……すけ、さん」
照れながら名前を呼び返すと、高山さんはふわりと微笑んでそっと腕を差し出してきた。それに応えるように頷いて、差し出された腕に自分の腕を通して寄り添う。
全てが幻想的で夢のようで、これ以上の幸せなんてないんじゃないかと思えるほどの時間だった。
気が付いた時には結婚式も披露宴も終わって誰もいないホテルの休憩所でお色直しで着ていたドレスのまま、ソファに腰を下していた。
「……そろそろ、戻らなきゃ」
披露宴が終わったあとは高山さんが用意してくれたホテルに移動して宿泊する予定だ。
レンタルではなくオーダーメイドで買ったものとはいえさすがにこのままの恰好でホテルに行くわけにもいかず、着替えなくてはいけない。
「少し一人になりたい」と言って高山さんの元を離れてからだいぶ時間が経ったと思う。心配して探しに来る前に彼の元に戻らなくちゃ。
「未央?」
そう思って立ち上がった時、背後から懐かしい声で名前を呼ばれて私はそのまま固まった。