俺様社長に飼われてます。
「……後悔はないか?」
「!たか……宗介さん」
ドレスの裾をつまんでレディらしからぬ大股で歩いていると、曲がり角から声が聞こえたと思って歩みを進めて確認すると、高山さんが腕を組んで壁にもたれかかっていた。
「立ち聞きするつもりはなかったんだが……どうにも入りづらくてな」
「大丈夫。別に、聞かれて困ることなんてないから」
上手く言葉にできないけど、微かな怒りと、大きな悲しみと、嬉しさと。色んな感情が混ざり合って、胸にぽっかりと穴が空いたような虚無感に襲われて思わずうつむいた。
大きな手がいつものように、私の頭に乗せられた。
「下を見るな。自分で正しいと思って決めたことなら胸を張って歩け」
「……うん」
泣くな、とは言わない。
それが今、精一杯私にかけられる彼の優しさなんだろう。
自分が選んだことで誰かを傷つけて、それで後悔するだなんて傷けた人への冒涜だ。
わかっていても涙が止まらなくて、ぐしゃぐしゃの顔を上げて引きつった笑顔を見せれば高山さんは私を優しく抱き寄せて、泣き顔を隠すようにして包み込んでくれた。
もう、交わされる言葉なんて一言もない。
――きっといつか、弱くて泣き虫なあの人にも、手を取って涙を拭ってくれる大切な人が現れますように。