俺様社長に飼われてます。


「……えっと、彼女さんとか?」

「そんなものはいない」


間髪入れずにそう切り捨てられて私はシーツの上に広がる化粧品の数々を見下ろして口元を引きつらせた。


「今はお前の世話で忙しいからな」


"今は"と含みのある言い方に少し引っ掛かりを覚えたけれど、すぐにそれを振り払ってごまかすように化粧品に手を伸ばした。


「……ありがとう、ございます。いただきます」


私が渋々化粧品を受け取る意思を示すと、高山さんはそれでいい、と言って立ち上がる。

ベッドのクッション部分が元の位置に戻ろうと反発して上に乗っているものかポンと軽く跳ね上がって、私は慌てて手を差し出した。


手の中に落ちてきたのは先端が真っ赤に染まったスティックだった。


「……口紅?」

「ルージュと言え」


すかさず突っ込みが入って、スティックをひっくり返してみると難しいカタカナのあとにルージュと書かれていた。


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