俺様社長に飼われてます。
「……あの?」
「喋るな。上手く塗れない」
叱責されて、私は身体を縮こませて黙り込んだ。
至近距離での睨みつけは結構怖い。たぶん本人は睨んでるつもりはないんだろうけど。
「発色はなかなかだな」
高山さんが少しだけ離れて、ルージュにキャップをしてそれを私の手の中に戻した。
私は少し遅れて何をされたのか理解して、はっと息を呑んだ。
「お前、死ぬほど赤が似合わないな。」
高山さんが小馬鹿にしたように薄く笑って、ベタつく私の唇に触れてくる。
「……ふむ」
唇なぞったり、軽く押してみたり、私の唇に触れた自分の指をしげしげと眺めたり。
何度かそれを繰り返したあと、何を思ったのか目の前の男は鼻と鼻がくっつきそうなほどに近付いてきた。