俺様社長に飼われてます。
「やめて!どこに連れて行くの!?」
痺れを切らしたように一人の男に担がれて、私は吠えた。大きな背中を蹴り飛ばすのと同時に私の身体は玄関から外へ放り出される。
地面に叩き付けられた痛みに悶えていると、髪の毛を掴まれて上を向かされた。
「お前は母親に売られた。これからは泡に沈んで借金を返せ」
「泡?泡って何……」
降り注がれた言葉の意味を理解するより先に、鼻と口元にハンカチがあてがわれた。
「やめ……!」
突然のことだったのでそのままの勢いで息を吸い込むと、ツンとした薬品の臭いが鼻をついた。
指先から足の爪先にかけて全身が痺れて、力が入らなくなっていく。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
霞む意識の中で許しを乞うような母の悲痛な叫び声を耳にしながら、身体を裂くような鈍い痛みを感じていた。