俺様社長に飼われてます。
「できそうか?」
「え?あー……ははは……」
湯気の立つコーヒーカップを持ちながら、私の背後から顔を覗き込むようにして現れた高山さん。
てっきりもう仕事に行っていると思っていたからびっくりして本を落としてしまった。
「その反応だとさっぱりってとこか」
「……ごめんなさい」
本を読むのは好きじゃない。
教養の一環として幼い頃から父にたくさんの本を読まされてきた影響かもしれない。
知識量としては活字を読むことが可能だがどうにも身体が拒絶する。それに、自分の興味のないことなら尚更頭が痛くなる。
「謝らなくていい。こんなのはやってるうちに覚えたらいいんだ」
なんて、コーヒーカップを傾けながら高山さんが言う。
コーヒーの独特の香りが鼻をくすぐって、慣れない刺激に私は一瞬息を止めてしまう。