俺様社長に飼われてます。
社長のデスクの正面に置かれた長机に山積みになった書類――私はため息を吐いた。
"お手伝いさせてください"
そう言ったのは確かに私だったけれど社長秘書とはこんなに大変な仕事なのか。
いや、仕事内容として単純だけれどこうした集中力を要求されることはどうにも苦手なので余計に嫌気が差した。
見本として渡された紙には黒いインクで押された会社名と高山さんの名前が入った判と、右上に赤いインクで"許可"と判が押されていた。
つまりこの書類が千枚あるとして、その二倍判を押さなくてはいけないわけだ。
気が遠くなりそうになって、高山さんをちらりと一瞥するけど彼はもうすっかり自分の仕事に集中しているようでこちらを見向きもしない。
ため息をついて判やインクのセットが入った箱に手を伸ばす――扉の外から、ドタドタと床を踏み鳴らす音が聞こえて私は固まった。