俺様社長に飼われてます。
Chapter4 何かお役に立ちたいんです。


右を見れば鏡、左を見ても鏡。
正面にも鏡。

どこに顔を向けても自分が映るその空間に、私はそわそわと落ち着かない気持ちでいた。


私の背後には上機嫌に鼻歌を歌いながら、美容室などでよく使われているカートのようなものに乗せられた、たくさんの化粧品を漁る柳谷さんがいた。


「うーんと、未央ちゃんはお肌の色がちょっと黄色みがかってるから〜、ベースはピンクね!」


もう既に彼……彼女が何を言っているのかわからない。


先程化粧水でひたひたにされた顔面に薄ピンク色のクリームが塗られていく。

次にあれ、これ、と魔法の言葉のように柳谷さんの独り言が部屋中を満たしていった。


「未央ちゃん、自分でお化粧しないの?」


あ、これ高山さんにもらったなんとかチーク。液体のやつ。


ハケでちょこん、と頬に乗せられてグイグイと指先で伸ばされていくチークを気にしつつ、私は言葉を選び取るようにしてゆっくり口を開いた。


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