俺様社長に飼われてます。
「!社長、申し訳ございません。小娘が車の前に飛び出してきまして」
チカチカと光が点滅する視界に映ったのは、タクシーの運転手のような制服を纏った初老の男性と私の寝転んだ状態の視点からは確認することのできない――グレーに近い、男物の黒いスーツだった。
「社長、どちらに……」
初老の男性が慌ててスーツの男を制止しようとするも、それは私の方へとカツカツと音を立ててやってくる。
「お前、大丈夫か?」
初老の男性の腕が離れて、代わりにスーツの男が私の目の前にしゃがみ込んだのがわかった。
私に向かって伸ばされた腕にすがるようにして掴まる。
「助けて」
水分の失われた口からこぼれたのはそんな言葉だった。