俺様社長に飼われてます。
「すみません……」
「たく、アシスタントなんて代わりはいくらでもいるんだからな」
叱られている若者はバツが悪そうにずり落ちた眼鏡を定位置に戻して床に頭を擦り付けるようにして頭を下げていた。
中年のおじさんはその後もブツブツと小言を言っていたが、頭を下げたままで何も反応しない相手に興味を失ったのか気怠げに仕事へと戻ったようだった。
行動が遅いだけであんなに言われるんだ、と内心ビクビクして若者を見つめていると、その男の人がゆっくりと顔を上げる。
バッチリと視線がぶつかって、どうしたらいいのかわからず私は慌てて軽い会釈をした。
戸惑ったのはあちらも同じようで、男の人はモサモサの癖毛を振り乱すようにして勢いよく頭を下げた。
その勢いで彼の顔から眼鏡が吹っ飛んでしまう。