俺様社長に飼われてます。
「あの……大丈夫ですか?」
眼鏡を失いあわあわと見当違いな場所を見回すその人に、拾い上げた眼鏡を手渡す。
「あ!すみません、俺の眼鏡……」
眼鏡を受け取った男の人はそそくさと眼鏡をかけ直して、私の顔を見てギョッと目を見開いた。
「あああ……モデルさんにご面倒をかけるなんて、スタッフ失格です!すみません!」
再びガバッと音が鳴りそうなくらいの勢いで頭を下げたその人に思わず肩をすくめる。
こういう業界は縦社会が厳しいんだろうか。
あまりに腰が低すぎてこちらが悲しくなってくる。
「い、いえ……私なんて、大した者じゃないので……。あの、アシスタントさんなんですか?」
顔を上げるよう促すと、男の人はきょとんとした顔をしていた。
手入れのされてないボサボサの髪の毛と比べ、肌は天性のものなのかものすごく綺麗だった。
よれて今にもずり落ちそうな紺色のパーカーを着直して、男の人は眼鏡を両手で上げた。