俺様社長に飼われてます。


「赤羽さんは写真撮らないんですか?」

「あはは、下積みとか色々事情があるんですよ。この業界は」


赤羽さんはそう笑って口を閉ざした。

見習いとはいえカメラマンなのに、カメラを持たせてももらえないなんて。


「……今度、私のこと撮ってください」

「え?でも、自分はまだ」


そう言いかけて、赤羽さんは一瞬口を一の字に結んでからへにゃりと笑った。


「ダメですね、前向きに考えなきゃ。篠原さんを撮るために、早くカメラ持たせてもらえるように頑張ります」


私はやりたいことも、夢もなく生きてきたから夢のある人、憧れを追いかける人の気持ちはわからない。

親に決められたことを決められたようにして、将来だって親に決められていた。

自分で何かをしたことが無かった私は、親がいなくなってから全てを失ったから。


何もない、空っぽの私には赤羽さんがひどく眩しく感じられた。


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