俺様社長に飼われてます。
『――ご挨拶もそこそこに、ゲストの皆々様。本日は肩の力を抜いてどうぞ、パーティーをお楽しみ下さいませ』
流石に凡人とは経験値や冷静さが違う。
高山さんは周囲に動揺が悟られる前にすぐに切り替えて挨拶の締めの言葉をマイクに向かって放った。
恐らく、彼の心の動きに気付いたのはこの会場では私くらいのものだろう。
仲間外れにされかけた恨みを込めながら――届くかは分からないが――呆気に取られながらも手際良く役割をこなす男に向けて小さく舌を出した。
「――篠原さん?」
ふと、かけられた声に周囲を見回す。
私の全身に注がれていた視線はパーティー開始の合図と共にあっという間に散り散りになって、今や私に興味を持っている人間なんていないのだけれど。
そんな中で私に声を掛けて、かつ名前を知っているということは知り合いで間違いないが――何処にいるんだろう?