俺様社長に飼われてます。
「あ、赤羽さん……あ、あのひとたち」
失礼になるので指は指さないけれど、視線であっち、と赤羽さんに訴えかけると彼は興味がなさそうに瞬きを一つしてそちらを見た。
プロ野球選手、大御所と言ってもいい女優、今をときめくアイドルまで――たくさんの芸能人が同じ空間にいる。
「ああ、この会社に居たら別に珍しいことじゃなくなりますよ。あの社長、やたらと顔が広いんで」
「へ、へえ……」
別に芸能人と知り合いたいだとかそういったミーハーな心がある訳では無いが――全くないと言ったら嘘になる。
それでも話しかける気はないので、気持ち肩を縮こませて逃げるように赤羽さんに近寄る。
「?どうしました、体調でも悪いんですか?」
ソワソワと落ち着かない様子の私を赤羽さんは不思議そうに見る。
私は小さく首を横に振って、彼にだけ聞こえるように小声で話し始めた。
「いえ、なんか……赤羽さんしか知り合いがいないですし、ここ……キラキラしすぎて肩身が狭い……」
「……あー、確かに。俺もこういう華やかな場所って苦手なんですよね。とりあえず上に言われたから来たけど」
煌びやかな会場の装飾にも華やかな芸能人にも興味がないらしい赤羽さんはいつも通り無気力そうに眠そうな目を瞬かせた。