俺様社長に飼われてます。
「顔色が悪いな」
そう呟いて、高山さんは近くにいたホテルマンに声を掛けた。
「すまないが気分の優れない者がいる。至急、一室用意してくれないか。クラスは問わない。それから、部屋に水と胃薬を用意して欲しい」
私の様子を見ただけでそう的確な判断を下してテキパキと周囲に指示を出来るんだから、この人も曲がりなりにもきちんと社長をやっているんだなぁとボーッとする頭で考えていた。
「歩けるか?」
「…………………………むり」
今にも死にそうですといった声でそう返事をすると、高山さんは美しい顔のその眉間に深いシワを寄せたのだった。
「頼むから吐くなよ」
高山さんのその声と、回転する視界と浮遊感。一瞬会場がざわめきに包まれて、私は自分の状況を理解できずに顔を上げるとすぐ近くに高山さん首筋があって、思わず身体を強ばらせた。
「……ご、ごゆっくり」
なんて、本人はふざけているわけではないが、ふざけたそのセリフを吐いた赤羽さんを睨み付けると彼は苦笑いを返した。
高山さんの首筋から香るシトラス系の甘い香りに頭がクラクラとする。
――自分がお姫様抱っこで高山さんに運ばれていることを知ったのは、ホテルの最上階――スイートルームのキングサイズのベッドに荷物のように放り投げられた時だった。