俺様社長に飼われてます。


「あら」


高山さんの膝の上に乗るようにして、彼の唇に自分のそれを寄せている綺麗な女の人。

長いまつ毛に縁取られた焦げ茶色の瞳が呆然とする私を捉えたと同時に、真っ赤な唇が弧を描いた。


「お子様にはまだ早かったかしら?」


それが自分に向けられた嘲笑だと気付いて、私はぱちくりと目を瞬かせた。その反応が余計におかしかったらしく、緩くパーマのかかった長い髪を揺らして女の人は笑う。


「……ご、ごめんなさい。お邪魔しました」


私の位置からだと高山さんの表情は見えない。見たくもない。


「っ、未央!」


気まずさからそっと目を逸らして踵を返すと、背後から焦ったような声が響いた。


恋人はいないって言ってたのに、あれは嘘?それならどうして私にキスをしたり触れたりするの?

もやもやとした感情と高山さんの声を振り切るようにして勢い良く扉を開けて、社長室を出た。


今は何も考えたくない。


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