俺様社長に飼われてます。
目を覚ますと、今度は揺れる車内ではなく――真っ白な天井があった。
「気が付いたか」
静かな、心地よく耳に入ってくる低い男の声に私は視線をそちらにやった。
サラサラの黒髪に、切れ長の冷たい色を宿す瞳。眉間に寄せられたシワと相まってものすごい威圧感のある男だった。
誰、と声を出そうとしたが酷く喉が乾いておりひゅ、と空気の抜けるような音が鳴る。
それに気付いた男は更に眉間のシワを濃くして、私の枕元にミネラルウォーターと記されたペットボトルを転がすように置いた。
私はそれを手には取らず、ゆっくりと重たい身体を起こして男を見上げた。
「俺は仕事に行く。夜まで戻らない」
「……」
「家にあるものは好きに使っていい」
それだけ言って私の反応や意思は確認せず、かっちりとスーツを着直した男は私に背中を向けた。
しばらくして響いた扉の閉まる音。
私のいる空間だけ時間が止まってしまったかのように数秒固まったあと、ハッと我に返って周囲を見回す。