俺様社長に飼われてます。


「だ、だって……キス、してたんですよ……?」



思い出したくもない社長室での光景を思い出してげんなりする。

そんな私を見て赤羽さんはうーん、と小さく唸り声を上げてアゴに指先を当てて考える仕草を見せた。


「でも、篠原さんが立ってた角度からそう見えただけかもしれないじゃないですか。ていうか、本人に聞きもしないで決め付けるのは早計っていうか」

「ソウケイ?」

「あー、早とちりじゃないか、ってことです」


赤羽さんは困ったように視線を泳がせて、ずり下がった眼鏡を指先で軽く持ち上げるようにして直した。


「でも……」

「聞くのが怖いですか?」


私が次に言おうとしたことを赤羽さんはスパッと切り裂くように言い当てた。

定位置に戻った眼鏡と蛍光灯の反射でその瞳の色は伺えない。


私は一瞬の動揺を悟られないように視線を逸らして息を飲んで、それから彼をもう一度見上げた。


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