俺様社長に飼われてます。


「社長のこと、好きなんですね」


赤羽さんがそう言ったタイミングで、グラスの中の氷が溶け落ちる音が静かな部屋に鳴り響いた。

私は否定も肯定もせずに、ガラス製のテーブルに静かに麦茶のグラスを置く。


私の膝の上でくつろいでいたメープルちゃんを抱き上げてぎゅうっと抱き締めれば、突然のことに驚いたのかメープルちゃんは悲鳴を上げた。


「とりあえず今日は寝た方がいいですよ。もう遅いですし。あ、寝室は篠原さんが使ってください」


時計を見れば深夜の0時を過ぎていた。
誰かと一緒にいると時間が過ぎるのが早い。


「赤羽さんはどうするんですか?」

「いつもカメラいじったりパソコンいじったりしてリビングで寝落ちてるんでお気になさらず」


そう言ってテーブルの上にある薄型のノートパソコンを自分の膝まで移動させて、赤羽さんは何やら操作を始めた。

早くも完全に自分の世界に入ってしまったらしい赤羽さんにメープルちゃんでパンチをしてみてもうんともすんとも言わない。


これ以上邪魔するのはよそう、と思って軽い会釈と挨拶をして寝室に迎えば、ドアを閉める時に私が振り向いた一瞬――赤羽さんが少しだけ笑ってくれた気がした。


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