叫べ、叫べ、大きく叫べ!
すると、後ろから「何してんの」とため息混じりの声が降ってきた。
視線を後ろに向けると来たばかりの都波がいて、「おはよ」と笑顔を向けられて、少しだけドキリと高鳴る。
「お前ら朝からひっつきすぎ。てか暑苦しいんですけど」
「うるさい!うちらは今、最っ高に!幸せを感じてる最中なんだから入ってこないでくださーい」
「そーだそーだー」
「はあ!?なんだそれ。……そうなの?」
耳元でそっと囁かれた声にゾクッとして、たちまちに頷く。
彼女たちとは違う甘みを含んだその声でさらに耳元で「そーなんだ」と囁くもんだから咄嗟に空いてる手で右耳を押さえた。
吐息が、ひどすぎる。わざと?ってくらい酷い。
そんな私の反応に何を思ったのか都波は反対の耳に近づけて。
「夏澄ちゃん耳真っ赤だよ」
「っ、」
「耳弱いんだ?かわいいね」
身動き取れないことを分かっててこうしてくるなら彼は確信犯だ。
なんて嫌なやつ……!
目の前の2人はこの様子に気付きもしない。
そのくらい私にしか聞こえない声で喋っている都波を私は許さない。
クスクス笑う声が後ろから聞こえてイライラする。
まじムカつく。ほんとムカつく。
早く夏休みになれ!
いや違う。早く席替えさせてください!
ようやく2人が離れたのは予鈴が鳴ってからで。
その音とほぼ同時に来た糸口くんにも「なにやってんの」なんて冷ややかな目で言われた2人は楽しそうにその場を去っていった。