叫べ、叫べ、大きく叫べ!

そして、今。夏休み前の最後の景色を見るためにここに来ている。


やっぱりここは落ち着く。
風が生温いけど、たまに涼しげな風が身体を撫でて、気持ちいい。


自分の指定位置へ行く前にふと頭をよぎって、敷地内の隅にあるベンチの方へ足を運んでみた。


普段から視界に入らないその場所は、ちょうど日陰になっていて涼しげで、それはもう昼寝には適した場所だなと思った。


残念ながらあの男子はいなくて一息つく。


……いや、なんで私残念に思ってるの。
人がいないってだけでこんなに嬉しいはずなのに。


私以外誰もいない。私だけの場所。いまこの瞬間だけ屋上を独り占めしているんだよ。


それの何に不満を抱いていると思っているんだ私は。


……ちょっとくらいここに座ってもいいよね?


誰もいないベンチに何を遠慮してるんだと内心ツッコミ、キョロキョロと周りを見渡し誰もいないことを確認してから恐る恐る座った。


ヒンヤリとしたベンチに一瞬身を震わせて、ふぅと力が抜ければ壁に後頭部を預けた。


雲が速い。綺麗な水色。あ、涼しい……。


思わず気持ちのいい爽やかな風が頬を撫でて、目を閉じた。


寝たくなるのも分かるなぁ。
日陰だし、暑苦しくないちょうどいい風が入ってくるし、早く気付けば良かったこんないい場所。



「そこ、いいでしょ」

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