叫べ、叫べ、大きく叫べ!
得意気な様子を含んだ落ち着きのある声に視線を移す。
ぼーっとした頭がクリアになったのは声の主がもう少し近づいてきた頃で。
「あ、ごめんなさいっ」
「いいよ退かなくて。そのまま座って」
「あ、うん」
隣に座った彼はさっき私がしたように足を投げ出して、頭を壁に預けていた。
綺麗な横顔に見とれながらも、私も同じような格好をする。
会話は全くなく、ただ空の動きを眺めているだけ。なんともシュールな2人なんだろうか。
「あんた最近ここに来なくなったよね」
「え、」
「それに雰囲気?変わった」
顔は空を見上げたままポツリと呟くように言う彼にドキリとする。
この人は一体何を言っているんだろう。
雰囲気が変わった?どこが?
特に何も変化は無いですけど……。
強いて言えば、髪が伸びたってことくらい。
そう髪を撫でながら思う。
「何かの見間違えじゃないの。私全く変わってないよ全然」
「あー……まあ、そう言うよな」
「そう言うよな、って……――まさかっ、」
「うん、そのまさか」
彼は空から私を映して、「ははっ」と笑った。その笑顔はぎこちない。
そうだった。この人“そういう”体質だった。
だから私はあっさり受け入れることができて、やっぱり凄い人だななんて感心していると、彼はおかしそうに笑った。